バス運転手の仕事がきついと言われる理由をリサーチ。路線バス、観光バス、送迎バス、それぞれの働き方の実態や、仕事選びで失敗しないための注意点をまとめました。
バス運転手の仕事がきついと言われる理由には、「長時間運転することが多い」「変則的なシフトで生活が乱れがち」「就業条件と給与のバランスが取れていない」ことなどが挙げられます。
実際にバス運転手として働いている人1647人を対象にアンケートを取ったところ、最も大変だと感じるのは「長時間の運転」という結果になりました。
他にも、「渋滞や天候によるストレス」「お客様対応」も多いという結果になっています。
引用元:対象:バス運転手として働いている人1647名 期間:2024年10月11日~10月17日実施(調査機関:Fastask)
バス会社のシステムによって働きやすさは変わってきますが、実際はどうなのか、路線バス・観光バス・送迎バスの種類別に実態を見ていきましょう。
バス運転手の仕事において、まず大きな課題となるのは事故リスクです。大型車両であるバスは、乗用車に比べて死角が多く、急な飛び出しや渋滞、悪天候など、予測が困難な事態に常に対応しなければなりません。
そのため、一瞬の判断ミスが重大な事故につながる恐れがあり、たとえ自分に過失がなくとも、業務停止や社会的責任が問われる場合があります。乗客の命を預かるという責任の重さは、運転中の緊張感を常に維持する大きな要因となるため、事故防止対策は必須です。
運転者は、発進前に車内ミラーや直接の目視で、すべての乗客が確実に着席していることを確認する必要があります。これにより、急ブレーキや急発進時の転倒事故を未然に防ぐことができます。
車内での案内や注意喚起は、乗客が落ち着いて行動できるようにするために重要です。たとえば、乗降時に「お待ちください」や「着席をお願いします」といった声かけが、事故防止に効果をもたらします。
次に、運転者に対する安全教育は、単に知識を伝えるだけでなく、実際の現場での体験やシミュレーションを通じて、危険予知能力を高めることが目的です。
運転者同士でヒヤリ・ハット事例を共有し、実際にどのような状況で事故が発生しうるかを体験することで、リスクへの意識が向上します。
長時間の運転や不規則なシフトは、運転者の体調に大きな影響を及ぼすため、定期的な健康診断や十分な休息の確保が必要です。運転前の体調チェックや、勤務中の適度な休憩も、事故防止において欠かせない取り組みとなります。
また、バス自体の整備状況や技術の導入も、安全運行には不可欠です。
ブレーキ、タイヤ、車体各部の整備状態を日々確認することで、予期せぬ故障による事故リスクを軽減できます。
車内ミラーの大型化、ドライブレコーダーの活用を用いた走行状況モニタリングシステムなど、技術を取り入れることで、より迅速かつ正確な安全確認が可能となります。
次に、拘束時間の長さと不規則な勤務体系についてです。バス運転手は、決められたダイヤに沿って運行するものの、交通状況や天候の変動により実際の労働時間は延びることが多いです。特に、朝夕のラッシュ時に合わせた運行では、乗務時間が長くなるとともに、連続勤務による疲労が蓄積される傾向があります。
加えて、深夜や早朝の勤務が頻繁であるため、生活リズムが乱れやすく、家庭との両立が難しい場合も少なくありません。
年間の総拘束時間が3,300時間、かつ1か月の総拘束時間が281時間を超えないという原則が決まっています。長時間労働の防止や運転者の心身の疲労の蓄積を防ぐための重要な規定です。
この規定は、運転者が安全に業務を遂行できるよう、また万一の際にも迅速かつ適切な対応が可能となるよう、労働時間の上限を明確に定めることで、労働環境の整備を促進する目的で設けられております。
また、バス運転手は接客業としての側面も持っています。路線バスや観光バスの場合、運転だけでなく乗客への案内、乗降時のサポート、さらにはクレーム対応など、接客業務も求められます。これらの業務において、時には理不尽なクレームや厳しい言葉に晒されることもあり、精神的なストレスが増す原因となっています。
さらに、運転中にトイレ休憩が取りにくい環境であるため、生理的な不快感が長時間続くことも、身体的および精神的な負担となっております。
到着時刻・発車時刻に関するクレームについては、乗客に理解を求める説明が必要です。渋滞などで到着時刻が遅れる場合、運転手の責任ではなく、バスという乗り物の特性として理解すべき事柄です。
しかし、乗客は原則を理解しているにもかかわらず、実際にはイライラしてしまうことがあるため、その状況を踏まえる必要があります。こうした場合には、「皆さま、お急ぎのところ、渋滞によりバスが遅れてしまい、誠に申し訳ございません」といった心を込めたアナウンスを繰り返すことで、運転手側の謝罪の気持ちを伝えることが大切です。
基本的には、バス停以外での乗車や降車の要望は、承るべきではありません。
例えば、路線バスに乗り遅れたお客さまが、バスを追いかけて「乗せてください」と迫るケースがしばしば見受けられます。しかし、道路運送法に基づき、路線バス事業は事業計画に従ってあらかじめ定められた路線および停留所の位置で運行することが義務付けられております。
もし、バス停以外でお客さまを乗せてしまうと、許可を得ていない場所での乗降となり、法律に違反することになります。また、「家が近いから降ろしてください」といった要望に応じる場合も、同様に法律違反となります。
一方で、高速バスやツアーバスなどの場合、以下のような緊急事態においては、柔軟な対応が認められています。
このような場合には、最寄りのサービスエリア(SA)に立ち寄るなどの対応が可能です。
さらに、ドライブレコーダーによる監視の存在も、現代のバス運転手には避けられない問題です。常に記録されているため、細かい運転操作が常時チェックされ、万が一の際には映像が証拠として利用される可能性があります。このような環境下では、運転中に「完璧な運転」を常に求められるため、精神的なプレッシャーが高くなっています。
バス運転手の仕事は、単なる運転技術だけでなく、社会全体の安全を守るための厳しい責任と、それに伴う多くの苦労が存在します。これらの大変な点は、業界内で改善が模索されているものの、依然として多くの運転手が日々これらの困難と向き合いながら業務を遂行している現状です。これらの厳しい環境を乗り越えるためには、運転手個人の自己管理や精神的な強さはもちろん、企業側の柔軟なシフト管理や労働環境の改善が求められております。
バス運転手は、単に大型車両を運転するだけではなく、多くの乗客の命と安全を守る役割を担っています。交通インフラの要として、路線バス、高速バス、観光バス、送迎バスなど、バスの種類によって仕事内容や勤務体系が異なり、業務内容は非常に多岐にわたる職業です。
ネットの情報からも見受けられるように、バス運転手の大変な面としては「神経を使う」「責任が重い」といった表現が多く、乗客の安全確保のためには常に集中力が求められます。交通状況、天候、道路の混雑など、さまざまな要因に柔軟かつ迅速に対応する必要があるため、運転技術だけでなく精神的な強さも必要です。
バス業界では人手不足の影響もあり、採用条件が比較的柔軟であるため、運転技術や経験が未熟な方でも、研修制度や資格取得支援を利用してキャリアをスタートさせやすい環境が整っている会社もあります。
バス運転手の中でも特にきついと言われがちなのが、路線バスの運転手です。
■路線バスの勤務シフト例
運行ダイヤが決まっているため残業は少ないものの、シフト制で拘束時間が長く、変則的な勤務時間になることがほとんどです。運行本数が圧倒的に多く、よりたくさんのお客様を乗せる重圧からきついと感じる人もいます。
観光バスは1日かけて観光名所をまわるため、路線バスと同様に拘束時間は長くなります。
■観光バスの勤務シフト例
ツアーに合わせて乗務を行うので、残業が発生しやすいのが特徴です。長時間休憩なしで運転することもあり、最初のうちは疲れを感じることも。ただしツアーの時間帯はほぼ決まっているため、夜はしっかり寝て規則正しい生活が送れます。
バス運転手の中でも、未経験者が働きやすく、比較的、勤務が楽なのが送迎バスです。
■送迎バスの勤務シフト例
送迎は定時に行うことがほとんどなので、残業が少なく、拘束時間も短めです。他のバスと比べると運転距離も短く小型バスを使うことが多いため、まずは送迎バスからスタートし、その後観光バス等へステップアップしていく会社もあります。
バス運転手に向いているのは、どのような人でしょうか。以下で詳しく解説します。
バス運転手にとって最も重要なのは、安全運転の意識です。大型車両の運転には特別な技術と集中力が求められるため、事故を防ぐための慎重な運転ができることが必須。道路状況や天候の変化に柔軟に対応できる判断力も求められます。
バスの運行は時刻表に基づいて行われるため、時間管理が得意で几帳面な人が向いています。定時運行を守るためには、乗客の状況や道路事情を考慮しながら適切に運行スケジュールを調整する力が必要です。
バス運転手は、ただ運転するだけではありません。乗客との接点が多く、接客業としての側面も強い仕事です。親切で丁寧な対応ができることや、トラブルが起きた際に冷静に乗客へ説明できる能力が求められます。加えて、同僚や管理者との円滑なコミュニケーションも重要です。
バス運転手の勤務は早朝や深夜になることもあり、不規則なシフトが多い職場環境です。そのため、自己管理が得意で規則正しい生活リズムを維持できる人が適しています。体調管理ができることは、長期的にこの仕事を続ける上で重要なポイントです。
渋滞や乗客対応など、ストレス要因が多いのもバス運転手の仕事の特徴です。そのため、冷静に状況を判断し、感情をコントロールできるストレス耐性がある人に向いています。特に、緊急時にパニックに陥らず適切な判断を下せる精神的な強さが必要です。
運転が好きで、大型車両の操作に興味や意欲がある人は、バス運転手として大きなアドバンテージを持っています。大型自動車第二種免許の取得に前向きで、日々運転スキルを磨く意欲があれば、さらに適性が高まります。
バス運転手の仕事は、利用者の安全を守るという責任の重さや長時間勤務、乗客対応など、肉体的にも精神的にも厳しい環境が伴います。日々の業務で「きつい」と感じることは珍しいことではありません。
まずは、職場内で相談できる窓口を活用しましょう。多くのバス会社では、人事部や労務担当者が従業員の悩みに対応しています。日々の業務が負担になっている場合、上司や人事部門に具体的な課題を伝えることが、解決への第一歩です。
このように具体的な状況を伝えると、シフト調整や休憩時間の確保、場合によってはカウンセリングの紹介など、会社が取れる支援策を提示してもらえることがあります。
労働組合に加入している場合は、組合を通じて労働条件の改善を交渉するのも有効です。労働組合は、従業員の権利を守るための団体であり、個人では伝えにくい要望を会社に伝える役割を果たします。
労働組合は、法律や会社規定に基づいて適切な対応を求めることができるため、職場の環境改善につながります。
もし、職場環境が法律違反と感じられる場合は、労働基準監督署に相談することを検討しましょう。匿名相談も可能で、以下のようなケースに対応しています。
労働基準監督署に相談することで、企業に対して是正指導が行われ、職場環境の改善が期待されます。
バス運転手は、乗客の命を預かる責任やクレーム対応など、精神的に負担のかかる場面も多い職業です。そのため、心身の健康を維持するために、専門のメンタルヘルス機関を利用することも選択肢の一つです。
特に、過度なストレスや不安感が日常業務に支障を来す場合は、早めの相談が心身の健康回復につながります。
現在の職場での改善が難しい場合は、転職を視野に入れるのも一つの方法です。バス運転手として培った経験は、他の運輸業界やサービス業でも活かせる可能性があります。
転職エージェントに登録することで、自分では見つけられなかった新たなキャリアの可能性を見出すことができます。
バス運転手という仕事の大変さは、同じ立場の人にしか分からない部分も多くあります。SNSやオンラインフォーラム、業界の交流会などを活用して、他のバス運転手と情報交換を行うことで、有益なアドバイスや共感を得られることがあります。
同じ業界で働く仲間からの励ましや情報は、日々の業務を乗り越えるための力になります。
労働契約の内容や、職場でのトラブルに対して法的な助言を受けたい場合は、弁護士や法律相談窓口を活用しましょう。無料相談を実施している団体も多くあります。
法律相談を通じて、自身の権利や適切な対応策を明確にすることができます。
ここではバス運転手の将来性について解説します。
少子高齢化が進む日本では、高齢者の移動手段として公共交通機関の需要が増加しています。特に、運転免許を返納した高齢者の利用が拡大し、医療機関や介護施設への送迎ニーズが高まっています。また、地方では高齢化が進行しており、コミュニティバスなど地域に密着したサービスの必要性も増大中です。このような背景から、バス運転手は今後ますます重要な存在となるでしょう。
技術の進歩により自動運転が注目されていますが、バス運転手が担う業務はAIだけで代替できるものではありません。以下のような人間の判断や対応が求められる場面が多くあります。
訪日外国人観光客の増加に伴い、観光バスや高速バスの需要が高まっています。特に、地方の観光地や都市間を結ぶバスの需要は大きく、運転手の雇用機会が増えることが期待されています。また、地域の観光資源を活かした観光ルートの拡充により、運転手の活躍の場はますます広がるでしょう。
自分に合っている勤務スタイルやバスの種類は、実際に働いてみなければわからないもの。失敗しないためには、複数の種類のバスを運行している会社を選ぶのがおすすめです。路線バス・観光バス・送迎バスを運行している大手バス会社などでは、職種変更やキャリアアップも可能です。
自分に合った働き方を見つけられるのはもちろん、長年勤める場合も、新鮮な気持ちで仕事に取り組めるでしょう。その他にも快適に働くためには、
などのポイントをチェックしましょう。
転職を考える上で考慮すべきポイントはたくさん。愛知県でバス運転手への転職を検討しているなら、企業規模と給料と福利厚生に注目することが、本当の安定性に繋がります。おすすめの3社を厳選しました。
ホワイトな労働環境で
安心して経験が積める
豊栄交通
給与 | 32万円〜 歩合制のため平均値 |
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年間休日 | 121日程度 |
職種の数 | 4種類(送迎・路線・貸切・観光) |
愛知の交通網を
大きくカバーする企業規模
名鉄バス
給与 | 月給19万円 +各種手当 |
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年間休日 | 121日程度 |
職種の数 | 5種類(路線・高速・送迎・貸切・空港) |
遠方からの転職も歓迎
充実したサポート
三重交通
引用元:三重交通公式サイト https://www.sanco.co.jp/company/recruit/lp/all/
給与 | 196,480円〜 +各種手当 |
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年間休日 | 107日 |
職種の数 | 4種類(路線・貸切・観光・空港) |
【選定基準】
愛知県バス協会に加盟する会社のうち、公式HPがあり、正社員採用を行っている会社の内、対応バス職種数が4つ以上かつ所有バス台数の多い3社(2021年8月24日時点)
※会社規模=バス事業の大きさと定義し、保有バス台数と対応できるバス運転手の職種の数に注目しました。